第8回目は、長野から駆け付けてくださった
農業生産法人(有)トップリバー代表の嶋崎秀樹氏をお招きして、
「儲かる農業教えます」というタイトルのもと、
農業で収益を上げるための基本的な考え方や
農業界の人材育成などについてご自身の経験をもとにお話ししていただきました。
冒頭で嶋崎氏は、農業と言っても農法や経営形態などによって
切り口はいろいろであり、そういった意味で、農業は無限大である
とおっしゃり、そこから講義がスタートしました。

嶋崎氏がまず強調したことは、
1.人材育成
2.契約販売
の2つです。農業の世界では、従来は人材育成が行われず、
志ある若者を受け入れることができなかったことから、
(有)トップリバーでは、社員が3~6年で独立できるような
指導を行なっています。
2000年の創立以来、既に独立した方もいて、現在は
平均年齢29歳の30人弱が働いていて、ほとんどの人は
農業への熱意は強く持っているものの、
土地も機会も技術もお金も何も無い状態でやってくるそうです。
そして、農業は素人にもできるが、きちんとした‘親’のもとで
ないと成功しないということをポイントとして挙げていて、
改めて人材育成の重要性を説いていました。
契約販売に関しては利益率が高いために行なっていますが、
全量を直接販売しているわけではありません。
直接販売の場合は支払いが遅れがちであったり、
時には支払いを踏み倒されることもあるため、取引先により、
バランスよく販売方法を選択しているそうです。

嶋崎氏は、「農と農業の違い」について、例えどんなに
大きな面積で行なおうとも利益を上げなければそれは‘農業’とは
言えず、さらに、‘農業’であるからには自分の作ったものを
生産に携わっていない人々に供給する義務があるとおっしゃっていました。
また、農家は儲かるべきではないと言われ続けてきたが、
税金があり、国が成り立つことによって農業ができるのであって、
だからこそ税金を払うためにもきちんと農家は儲けるべきだとも強調していました。
嶋崎氏は農業が儲からない理由として以下のようなことを挙げています。
まずは、農業に対する意識です。
仕事が無いから農業でもやろうというような考えは嶋崎氏に
言わせると甘すぎて、こういった甘さが成功しない要因になっているとのことです。
そして、農家が全員経営者であるためになかなか従来のやり方に
固執して他者の意見を聞かない傾向にあったということもおっしゃっていました。
また、農業は儲からないという固定概念を農家自身が持っていることも
指摘していました。自然なことかもしれませんが、
儲かっている農家のところには後継者がいて、
儲かっていない農家のところには後継者はいないことが多いようです。
さらに、消費者の欲しがるものとのギャップについても指摘されていました。
自分がいくら良いと思っても、相手が欲しがらないものでは
意味が無いし売れません。
そして、量販店、加工業者、生協など相手によっても求めるものが
違うため、きちんと見極めることの必要性も説かれていました。
では、高く売るための農業とはどのようなものなのでしょうか?
そのことについて嶋崎氏は主に次のようなことを挙げられました。
【得意先別、商品別の契約取引】
これは先に述べた通りです。
【目標設定と原価計算】
目標を定められない人は儲けることはできないそうです。
また、原価計算をしないということは他産業では考えられないことですが、
農家の中には少なくないそうです。
【生産者価格と流通価格】
例えば偶然にも収獲量が多かったからと言って大幅に値下げをしてしまっては
結果的に業界全体の足を引っ張ってしまうことになります。
市場の相場を見極めつつ、価値があると思うものはきちんとそれなりの価格を
つけ、儲けることが大切だとのことです。
【商売は5分と5分】
相手が誰であろうと商売をする以上は5分5分の関係だという
意識を持つべきだとおっしゃっていました。
【契約のメリット】
既に述べた通り契約販売にはデメリットもありますが、
利益率が上がるというメリットを活かすべきだとおっしゃっていました。
さらに、儲かる農業システムとしては
まず、作る能力に長けていても売る能力が極端に低ければトータルでは
うまくいかないことからも、営業部隊の必要性について触れています。
考えてみれば、営業部隊のいないメーカーは存在しません。
さらに、安定的に生産・供給すること、儲かる農業を実現するための
人材育成、農業だけではなく異業種と連携することの重要性も
併せて説明してくださいました。
新規就農についての考え方としては、
休耕地の増加はむしろ参入のチャンスと捉えるべきであり、
自分のための農業なのか、地域のための農業なのか、消費者のための
農業なのかという目標によって労働時間などをよく考える必要がある
とのことでした。
セカンドライフのために農業を始める人に長時間労働を求めることは酷ですが、
真剣に消費者のことを考えて農業をしようというのであれば
はじめのうちは休み無く働くくらいの気概が必要とのことでした。
最後に、農業は人を育てる産業であり、甘い産業ではなく、
規模や作物などいろいろではあるものの、
農と農業、趣味と仕事は区別するべきだとおっしゃり、
講義を締めくくられました。
講義を約1時間で終えられた後は、
聴講生から質問が飛び交い、活発な議論がなされました。

嶋崎氏のことは様々なところで伺ってはいましたが、
直接お話を聞くのは初めてでした。特に、農業界は志を持った
若者を受け入れることができていなかったため、人材育成が
重要であるという考え方に深く共感しました。
嶋崎氏は、トップリバーの真似でなくとも、
きちんと農業の人材育成をする組織が増えることを望んでいました。
実家が農家である私は農業界の参入に関しては、自分の意志があれば
比較的簡単に実現してしまいます。
そういった、ある種恵まれている環境にいる私も、その責任をきちんと果たして、
農業界の人材育成に一役買うことができるようになりたいと思いました。
嶋崎様、素晴らしいお話を本当にありがとうございました。
レポーター:早稲田大学4年 松橋拓郎
ブログ「プチ農民日記」更新中! http://ameblo.jp/takuro5296/
監修:第1期受講生 小島